―― 家族と土地、そしてウエウエテナンゴの未来をつなぐ一杯 ――
グアテマラ西部、険しい山々が連なり、澄んだ空気が流れるウエウエテナンゴ県。
昼と夜の寒暖差が大きく、乾いた風が山肌を抜けていくこの土地は、世界でも屈指のコーヒー産地として知られています。その山あいに、Palmira Farmersと呼ばれる小さなコーヒーの物語があります。
Palmira Farmersは、Altamira農園とLos Suspiros農園を管理するPalacios(パラシオス)ファミリーによるファミリーブレンドロットです。当主であるAxel Palacios氏は、6代続くコーヒー農家の家系に生まれました。
幼いころからコーヒーの木々に囲まれ、収穫の季節の香りや、発酵槽から立ち上る匂いを、日常の風景として育ってきました。Axel氏の妻、Aurora氏もまた、ウエウエテナンゴ県内のコーヒー農家出身。Palmira Farmersのロットづくりにおいて、品質管理の中心を担っているのはAurora氏です。
収穫のタイミング、チェリーの状態、乾燥の進み具合――そのひとつひとつに目を配り、「家族の名を背負うコーヒー」として、妥協のない品質を追い求めています。二人の息子たちも、すでにコーヒー生産を継ぐことを決め、両親とともに農園で働いています。Palmira Farmersは、単なるブレンドロットではなく、世代から世代へと受け継がれていく家族の決意そのものなのです。
農園の土壌は、franco-arenoso(フランコ・アレノソ)と呼ばれる砂壌土。水はけがよく、それでいて養分をしっかりと蓄える、コーヒー栽培に理想的な土壌です。周囲には針葉樹が自生し、木漏れ日がコーヒーの木をやさしく覆います。冷涼な気候と澄んだ空気は、コーヒーチェリーの成熟をゆっくりと進め、
奥行きのある味わいを育んでいきます。
Palacios Farmersは、自宅のすぐ隣に小さなウェットミルを構えています。ここで行われるのが、Fully Washed(フルウォッシュド)プロセスです。
ウエウエテナンゴのこの地域は、水源が限られています。その制約の中で品質を高めるため、2024年にはミュシレージ除去機を導入しました。果肉を除去したパーチメントは、わずかな水で水路を流れ、機械によって丁寧にミュシレージが取り除かれます。
その後、水を張った発酵槽で約24時間の発酵。
発酵を終えたパーチメントは、コンクリートパティオの上で8〜10日間、太陽と風にさらされながら乾燥されます。
限られた水資源を大切にしながら、クリーンで安定した味わいを生み出す――それは、この土地で生きるための知恵であり、未来への責任でもあります。
Palmira Farmersは、Xinabajul Projectにも参加しています。このプロジェクトは、ウエウエテナンゴ県内の小規模生産者たちが手を取り合い、近隣ごとに小さなコミュニティを築きながら、品質向上を目指す取り組みです。
中心となっているのは、**ROSMA農園**の農園主、Fredy Morales氏とMoralesファミリー。彼らの目標は、自分たちだけが良いコーヒーを作ることではありません。「ウエウエテナンゴ」という産地名そのものを、世界に誇れる存在にすること。その思いが、多くの小規模生産者をつなぎ、Palmira Farmersもその輪の中で歩みを進めています。
Palmira Farmersの一杯には、家族の歴史、土地の個性、そして地域の未来が重なり合っています。静かな山あいで育ったコーヒーの木々。家族全員で見守り、手をかけ、次の世代へと託す決意。そして、ウエウエテナンゴという産地を世界へ届けたいという共同の夢。そのすべてが、カップの中にそっと注がれています。
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