-三世代の時間が流れる農園。
グアテマラ北西部、険しい山々が連なるウエウエテナンゴ県ラ・リベルタ。
冷たい山風と澄んだ空気に包まれたその土地で、Donaldo Villatoroの農園は静かに息づいています。
物語のはじまりは1940年頃。現農園主Dnaldo氏の父、Felipe Margalito Villatoro氏がこの地でコーヒー栽培を始めました。自宅のまわりに一本、また一本と苗木を植え、家族の暮らしとともに育ててきたコーヒーの木々。今ではその想いを、息子のEduardo氏が受け継ぎ、三世代にわたる営みとなっています。
農園の風景はとても象徴的です。家のすぐそばに広がるコーヒーの樹々。そして自宅横には小さなWet Mill。収穫されたチェリーは、わずかな距離を運ばれるだけで精選工程へと進みます。無駄のない、滑らかな生産フロー。それは長年の経験が生み出した“家族のリズム”です。
1月から4月の収穫期には、完熟した赤いチェリーだけを見極め、約3回に分けて丁寧にハンドピッキング。集積タンクでの比重選別を経て、未熟豆はしっかりと分けられます。24〜36時間の発酵。
そして特筆すべきは、水です。自宅から300m先の源から引いた、豊富で清らかな湧き水。
その水で、じゃぶじゃぶとパーチメントを洗い上げる。この徹底した洗浄こそが、彼らのコーヒーを“とてもクリーンなカップ”へと導きます。
乾燥はコンクリートパティオで7〜11日間。山の陽光のもと、何度も丁寧にかき混ぜられながら、水分はゆっくりと抜けていきます。
この土地の土壌は「franco-arenoso」と呼ばれる多様性に富んだ砂壌土。栄養バランスに優れ、さらに農園の周囲には針葉樹が自生しています。標高の高さ、昼夜の寒暖差、豊かな水、そして最上級の土壌。そのすべてが、この一杯の背景にあります。
またドナルド氏は、ウエウエテナンゴの小規模生産者たちが連携する"Xinabajul Project"にも関わっています。このプロジェクトは、地域ごとに小さなコミュニティを築き、品質向上に取り組む挑戦です。中心となっているのは、ROSMA農園のFredy Morales氏率いるMorales Family。
彼らは「個人の農園」ではなく、「ウエウエテナンゴ」という名で世界に誇れるコーヒーを届けることを目標にしています。
そして、今回の焙煎は深煎り。チョコレートのようなコクと甘さ。そこにオレンジを思わせるほのかな柑橘のニュアンスが重なります。滑らかな口当たり、そして透明感のある後味。
それは、三世代の家族の手仕事と、山の湧き水の清らかさがそのままカップに映し出された味わい。
ウエウエテナンゴの山々と、ラ・リベルタの静かな朝。
その風景が、湯気の向こうにそっと立ち上がる一杯です。
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