00-エチオピア スケ・クト農園(浅煎り)

1,080円(税込)

豆の状態
購入数

生産国  :エチオピア
地区  :オロミア州 シャキソ
標高  :1800 - 2200m
農園  :スケ・クト農園
生産者  :アト・テスファイ・ベケレ
品種  :エチオピア在来種
生産処理  :ウォッシュト
焙煎度合い  :浅煎り
風味特性  :レモネード&フローラルの印象

【ストーリー】 
森を守るという約束 ― Suke Qutoの物語

エチオピア南部、グジ。標高の高い丘陵と、なだらかな谷が折り重なるオド・シャキソ。朝霧がゆっくりと森を包み込み、やがて陽の光が赤土を照らしはじめるとき、森の奥から甘い花の香りが立ちのぼります。そこに広がるのが、スケ・クト農園です。

この農園の物語は、一人の男の強い信念から始まりました。テスファイ・ベケレ。グジ・スペシャルティコーヒーを世界に知らしめた先駆者のひとりです。

彼はコーヒー生産農家の家に生まれ、幼いころからコーヒーと共に育ちました。けれど若き日の彼にとって、コーヒーは誇りというよりも、重労働の象徴でした。長い一日、過酷な作業。未来は見えず、希望も遠い。いったんはコーヒーから離れ、学び、別の仕事にも就きました。 やがて彼は、故郷グジのシャキソへ戻ります。

その頃、地域は深刻な危機に直面していました。1997年から1999年にかけて、大規模な山火事が森を焼き尽くし、5,000エーカーもの森林が失われたのです。森は、ただの木々の集まりではありません。それは土壌を守り、水を蓄え、命を循環させる“未来そのもの”でした。

政府の天然資源・環境保護部門で働いていたテスファイは、この再生という重責を担います。しかし焼け野原となった土地に戻った人々は、生きるためにテフやトウモロコシを植え始めました。彼らを責めることはできません。生活を立て直すには、すぐに収穫できる作物が必要だったのです。

それでも彼は思いました。「森を守りながら、暮らしを支える方法はないだろうか」 彼が選んだ答えは、コーヒーでした。

森林を再植林し、その木陰にコーヒーを植える。多様性を取り戻しながら、長期的な収入源をつくるという構想。地域の人々は一度は賛同しました。けれど、実がなるまでに4〜5年かかると知ると、苗木を返してしまったのです。

未来よりも、今日の生活が重い。それは当然のことでした。失望のなかで、彼は決意します。 ならば、自分が証明しよう。

わずかな土地を確保し、政府資金で苗木の育成場を始めました。何人も管理者を任命しましたが、成果が見えるまでに何年もかかる仕事は敬遠されました。やがて彼は公務員を辞め、自ら農家となります。それは賭けでした。森を守るという理想に、自らの人生を差し出すという選択。

数年後、最初の収穫が実ります。輝く赤いチェリー。森の中で育ったその果実は、驚くほど美しい甘さを宿していました。かつて苗木を返した人々が戻ってきます。「もう一度、苗を分けてほしい」その日から、グジの景色は少しずつ変わりはじめました。

今日、この地に広がる多くの農園は、スケ・クトの思想に触発されて生まれたものだと言われています。 農園はオド・シャキソの高地と谷に広がり、肥沃な火山性土壌に支えられています。落ち葉やコーヒーの根、シェードツリーの残渣を循環させる有機的な土づくり。すべてのコーヒーはオーガニック認証とレインフォレスト・アライアンス認証を取得し、森と共に生きる農業を体現しています。

テスファイは171名の契約農家と共に歩み、さらに221ヘクタールの農地を自ら管理しています。収穫期には200人以上の季節労働者が森の斜面を行き交い、赤く熟した実を一粒一粒摘み取ります。ウォッシュドロットは発酵槽でじっくりと時間をかけ、ナチュラルは高床式の乾燥棚でゆっくりと天日に晒されます。乾燥中、夜風が冷たく吹き抜けるとき、森の香りが豆に静かに染み込んでいくのです。

そして今回のロットはウォッシュト。私たちは、この土地が育んだ果実味をまっすぐに届けたいと考えました。焙煎は浅煎り。フルーツ感を全面に引き出すためのローストです。 挽いた瞬間に立ち上る、花のような甘い香り。

カップに口を近づけると、レモネードを思わせる爽やかな甘みが広がります。軽やかで透明感のある酸は、決して鋭くなく、どこまでもやわらかい。飲み進めるほどに、心地よい余韻が静かに続きます。それは、森が再び息を吹き返した証のような味わい。ただ甘いだけではありません。ただ爽やかなだけでもありません。その奥には、「時間を信じた人」の物語が宿っています。

4年、5年という歳月を待ち続けた忍耐。森を守るという揺るがぬ意志。地域の未来を変えたいという情熱。 一杯のコーヒーのなかに、そんな約束が溶け込んでいます。カップを傾けるたび、グジの高地の朝霧が浮かび上がるような。花が咲き、森が再び芽吹く瞬間を見つめるような。スケ・クト。

それは、コーヒーで森を守るという、静かで力強い物語なのです。